
錫のおちょこ(ぐい呑み)で日本酒を極上に。
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ぐい呑みで、日本酒はもっと美味しくなる。
父が日本酒を飲むときに、ぐい呑みにお酒を注ぐ姿。
徳利から小さな器へとお酒が注がれる様は、なんとなく緊張感と美しさを感じ、
少しずつ口へ運ぶシブいその様は、子供ながら憧れを抱いていたのを覚えています。

料理の味を邪魔することなく、むしろ料理の味を引き立てる日本酒。
お酒の美味しさは、味わいだけでなく匂い、温度、重さ、そして見た目などなど
食器を変えれば料理が変わるように、酒器を変えればお酒も感じ方がガラリと変わってくるもの。
ここはちょっと贅沢に、おうちでもぐい呑みやおちょこなど、小さな酒器に大きなこだわりを注いでみてはいかがでしょうか。
今回はぐい呑みのいいところ、そして錫(すず)という素材の良さについてご紹介していきます。
おちょことぐい呑みの違いとは?
ところで、「おちょこ」と「ぐい呑み」の違いをご存知でしょうか。
どちらも日本酒を飲む際に使用する酒器ですが、意外とその二つの違いは知られていません。
おちょこという言葉は小さな器という意味の「猪口(ちょこ)」から来ており、おちょこの特徴はぐい呑みに比べて小ぶりなサイズということ。
徳利と合わせて使い、クイッと1,2口で飲み干すようなサイズのもの、というとイメージしやすいでしょうか。
一方で「ぐい呑み」はもう少し大きく、グラスよりは小さい、数口で飲むようなサイズ感のもの。

おちょこよりも少し大ぶりでぐいぐいと飲めるサイズ感のものを「ぐい呑み」と呼ぶことが多いそう。
名の由来は諸説あるものの、やはり「ぐいっと呑む」ことのできるサイズ感からこの名前がついたと言われています。
とは言っても、実はこの二つには明確な基準があるわけではありません。
言ってしまえば、酒器をみておちょこだと思えばおちょこ、ぐい呑みだと思えばぐい呑みなのです。
この緩さとも、遊びとも言える基準は日本古来の独特な感性かもしれません。
古来より、生活とともにあった錫。
そんなぐい呑みは陶器やガラス、金属など様々な素材で作られています。
陶器やガラスにも優れた部分がありますが、今回お勧めするのは、金属、その中でも錫(すず)で作られたぐい呑み。
錆びや腐食に強い錫は古来より、神仏器具や酒器に使われてきました。
また高いイオン効果を持つことから、「不純物を吸収し、水をまろやかにする」とも言われています。
お酒もまた「雑味や角をとり、まろやかにする」ことから、酒器やぐい呑みとして根強い人気を誇る素材です。

錫は熱伝導率が高いため、冷蔵庫に入れればすぐにキンキンに。
ということは冷たいお酒を冷たいまま楽しめるということ。温度も感じながら、より一層美味しく飲むことが可能な素材なのです。
お酒の冷たさはぐい呑みを通して指にも、唇にも心地よく伝わる。まさに五感で日本酒を味わうことができるのです。
錫には金属独特の臭いもなく、陶器やガラスと違い割れてしまうことがないため、安心して使うことができます。
また長い時間を共にすると風合いを帯びていき、より一層愛着が湧くのです。

鈍く光る表面。シンプルな形。手仕事が生む柔らかさ。
金属製品の産地として400年以上の歴史を持つ富山県高岡市。古くは仏具や仏像などにはじまり、鋳造などの高い加工技術を持つ街として知られています。
この町の起こりは前田利長が商工業の町として「高岡」を作ったことから始まりました。当時から金属加工を生業とする家が多く、今でも代を重ね技術が受け継がれている街です。
そんな高岡で、錫で酒器を作るメーカーが能作(のうさく)です。
能作もまた、仏具を主に手掛ける伝統的なメーカーでした。今日ではデザイナーと共同でものづくりに取り組み、酒器や風鈴に至るまで優れたデザインのプロダクトを多数生み出しています。
能作は「より能(よ)い鋳物を、より能(よ)く作る」を信条に、日常生活に伝統を落とし込んでいます。

能作の「ぐい呑み」は、純度100%の錫で作られています。
錫は非常に柔らかい金属であるため、機械で仕上げることが難しく、最後は一つ一つ職人の手によって生み出されています。
そんな能作のこだわりからでしょうか。このぐい呑みは持つと不思議と気持ちが落ち着きます。
冷たく感じることの多い金属素材ですが、錫という金属が持つやわらかさと、職人さんの手仕事によって生み出されたシンプルな形は冷たさを感じさない仕上がりです。
食器としても使えるぐい呑み

そんな能作のぐい呑みですが、酒器以外にも使い方があります。
小鉢よりもさらに小さい器「小付」として、前菜などのお料理を盛りつけても、
きらきらとした錫製だから、ゼリーや寒天など水菓子を盛り付けても涼やかに。
特別な日のお料理や、お友達を招いた時にこんな洒落た使い方はいかがでしょうか。
盛り付けてから冷蔵庫で少し冷やせば、さらにひんやりと美味しさを演出できます。
二人で交わしたいぐい呑み「ふたえ」
同じく 能作のぐい呑みでおすすめなのが、「ふたえ」。
ふたえは2つで1セット。ぴったりと抱き合うよに重なり合い、コンパクトに収まるぐい呑みです。

こちらも錫製。結婚25年目を銀婚式、50年目を金婚式といいますが、結婚10年目は「錫婚式」と呼ぶのだそう。
お二人のお祝いに、将来のさらなる幸せを願って錫のぐい呑みを交わしてみてはいかがでしょうか。

錫メッキでお酒をまろやかに
一方、能作とは異なるアプローチなのが「磨き屋シンジケート」のぐい呑み。
こちらもカトラリーなどの金属製品の産地として名高い、新潟県は燕三条製のぐい呑みです。
ステンレス製ですが、内側に錫のメッキを施すことでお酒をまろやかな味わいにする効果を実現しています。

「磨き屋シンジケート」は、かつて一世を風靡した音楽プレーヤーの「背面の鏡面仕上げ」を手掛けたほど、高い磨きの技術を持つ職人集団。
周囲を映し出すほどピカピカに磨き上げられている側面は、指に気持ちの良い触り心地に仕上がっています。
傷をつけないように恐れることはありません。経年変化もまた、一緒に時を過ごした証になります。

ぐい呑みで、至福の時間をさらに豊かに。

一日の疲れをお酒に溶かし、ゆったりとした時間を過ごす。忙しい日常の中の、至福の瞬間です。
そんな大切な時間の、一杯の美味しさ、ありがたさを感じさせてくれるのが錫のぐい呑みなのです。
普段のお酒がいつもより美味しく感じる、そんなアイテムです。