「仔犬印」は、金属製品の一大産地としておなじみ、新潟県は燕三条にある「本間製作所」によるブランドです。
本間製作所は昭和26年の創業以来およそ70年にわたり、業務用の厨房製品を主に手掛けてきた老舗のメーカー。通称「仔犬ちゃん」がポップで可愛らしいロゴは、実はプロが愛用する製品にあしらわれる信頼の証でもあるのです。

本間製作所のすごいところ、それは製品の企画から、金属の板に命を吹き込む「金型」の製作、最終の仕上げまで社内で一貫したものづくりをされているところ。古くから分業が多い日本のものづくり業界では、意外とめずらしいことでもあります。

工場を訪れてみると、所狭しと並ぶ大型機械の迫力に圧倒されます。一番大きなプレス機は、動くたびに地面に衝撃が伝わるほど。

CRAFT STOREでも取り扱っている「フラットエッジ 深型ボウルセット」のボウルやトレイは、一枚の円盤をプレスすることで作られています。そう言うと単純に聞こえてしまいますが、ここでは語り尽くせないほど手がかかっているのです。

フラットなエッジを作るのは技術的にも難しいことで、ともすれば金属にシワがでてきてしまうのだそう。そこはさすが技術ある老舗、粘り強く試作を繰り返し、他にない機能的で美しいボウルを実現させています。

機械にセットして出来上がり、ではありません。製造の現場を見てみると、想像以上に「人の手」がかかっていて、さらに多くの工程を経ていることに驚きます。
たとえばステンレス表面の美しいヘアラインは、一点一点職人さんが具合を見ながら仕上げられています。

ボウルの注ぎ口も一個ずつセットして作られています。毎工程で毎度、職人さんが仕上がりを眼と手でチェックされていました。

奥の方では、熟練の職人さん達がなにやら金型の調整をされていました。そのスペースはどことなく落ち着いた空気感があって、じっくり研究をするように作業に没頭されていたのが印象的でした。

最終の仕上がりチェックも、人の眼と手で徹底的に。少しでも違和感があれば、しっかりと修正されます。代表の本間さんも、その様子を見ながら「ちょっと厳しすぎるんじゃないかな」と冗談で仰っていたほど。プロから信頼される品質を生む姿勢は、こういうところにも現れています。

製品について本間さんにお聞きしている時、「ここが良いんですよ」と、どことなく楽しそうに語っておられたことを覚えています。自分たちが作っている製品に愛があって、(良い意味で)自慢気に語れるというのは本当に素敵なことです。

製品に触れるだけでは、なかなか作り手の方々のことまではわからない。でも暮らしの中で仔犬印のボウルセットを使っていると、細やかに配慮されたその使いやすさに「誠実さ」のようなものが伝わってくるのです。モノが溢れる世の中だけど、そこまで感じさせてくれるものはほんの一握り。仔犬印の製品は、そのうちの一つであることは確かです。